固体ロケット推進薬

固体ロケット推進薬

100°C以下で溶けるゴムチューブ樹脂に酸化剤を混ぜ、型枠に入れて常温で固化させる固体ロケット用低融点推進薬の研究開発に取り組んでいます。安価で安全な材料を使った小規模生産が可能で、大幅な低コスト化が実現できます。次世代型固体ロケットの燃料として期待できるほか、これまで全量を輸入に頼ってきたモデルロケットの推進薬として活用できるものと考えています。

低融点ゴムを燃料とした固体ロケットの特徴を生かし、低費用ロケットの研究開発を進めます。新規に製造を開始するためには、技術面のみでなく、法規面においても一定の資格を必要としますが、現在は開発に着手するにあたり赤平市の植松電機が最低限の条件を満たした段階です。

低融点推薬は少量ずつ製造し、備蓄することで随時ロケットに充填できるという特徴があります。例えば、1バッチ1kg程度の小規模製造装置でも、薬量100kg程度の小型ロケットの製造が可能です。

研究としては、10年以上の歳月を経ていますが、実験研究を本格的に始めてからは数年で、当初は従来型の混和器による試作実験で初期的知見を得たのち、現在はJAXA宇宙科学研究所(堀、森田教授)の指導の下で、新形式の簡略化した振動加熱混和機による諸試験を実施しています。これには、ごく小規模なロケットの飛翔実験も含まれています。

産業化を見据えては、3段階を想定しています。第1段階としては、薬量1kg未満のモデルロケットで、アマチュアロケット活動のすそ野を広げるとともに民間の工学実験を視野に入れて質的向上を図ります。これにより、例えば定点着地競技では、定点回収を目的にし、漁業者との干渉を避ける技術を探求します。また、係留気球からの高空発射を試行することも可能です。第2段階としては、製造規模を強化しマイクロサット(1~10kg級衛星)の打ち上げを目指します。第3段階としての小型衛星(~100kg級)打ち上げ用のロケット開発には、製造体制を一段と強化する必要があります。この段階では既存の大企業の参加も考えられますので、技術開発の動向を見守りたいと考えています。

固体ロケットに充てんされた低融点推進薬

高度130㍍に 到達した低融点推薬の小型ロケット